逮捕は失踪のようなものともいわれるように、ある日突然訪れます。被疑者が逮捕を予期できたら逃走してしまうことも考えられるからです。
一度逮捕されてしまうと1ヶ月近く留置所から出てこられなくなる可能性があり、しかも本人も自由に行動できないために、あれよあれよという間に有罪判決がでてしまうことも少なくありません。
家族が犯罪者とならないために、残された家族にもできることはあります。家族が逮捕されてしまったときにすべき7つのことを紹介します。
逮捕中されたら起こること
逮捕されると、身柄の拘束と同時に自由な行動も制限されます。多くの場合で20日以上日常生活から離されてしまいます。
■管轄の警察署へと連れて行かれる
逮捕された場合、基本的に事件が起きた地域を管轄している警察署へと連れて行かれます。被疑者が遠方へ逃亡していた場合には、意外にも一般の人も使用する新幹線や飛行機などを使用して管轄の警察署へと送られます。飛行機の場合には、一番後ろの席に捜査官を伴って座らされます。搭乗は一番先に、降機は一番最後に行われるようです。
■所持品が取り上げられる
逮捕されると、持っている私物は一時的にすべて取り上げられます。釈放時にはすべて返還されますが、事件に関係のある証拠品として押収された場合には、事件終結(不起訴や確定判決など)まで返ってこないこともあります。
また押収の際に所有権放棄の手続きをしたものや、裁判で没収の言い渡しがあった違法性のあるものについては、二度と返ってきません。
■外部との連絡が取れなくなる
私物の取り上げに関連していますが、携帯電話やスマートフォンももれなく回収されますので、逮捕後は外部との連絡が自由に取れなくなります。証拠品として押収されることも多いため、長期間使用できない、または二度と戻ってこないことがほとんどです。
本人から家族へと逮捕の事実が知らされることはなく、その日に釈放されるような微罪処分の場合には、身元引受人として警察署から連絡がきます。重罪で数日間に渡って取り調べが行われる場合には、基本的には弁護士から、本人が強く望んだ場合には勾留前のタイミングで裁判所から連絡が来ます。
■写真撮影と指紋採取が行われる
警察署では、写真撮影と指紋採取が強制的に行われます。写真撮影では、正面、横顔、左斜め前からの角度で撮影が行われ、指紋は両方の掌と小指の側面をスキャンされます。
DNA鑑定は強制ではなく、別途身体捜査令状と鑑定処分許可状が必要となります。
■警察署での取調べが行われる
警察署では事件に関する取調べが行われ、検察へ送るための調書が作成されます。任意の取り調べとは異なり、所有物はすべて取り上げられてしまうので録音等はできません。ただし、2016年10月より、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件については、取調べ時の録音録画が義務化されています。2019年6月には全面義務化を予定しており、取調べの可視化が進んでいます。
■身体検査後、留置所に入れられる
逮捕されて、その日のうちに帰れなかった場合、警察署に併設されている留置所へ入れられます。留置所に入る前には、ほぼ全裸の状態で身体検査が行われ、徹底した所持品の検査が行われます。
女性の場合、女性専用の留置所に入れられるために、別の地域の留置所まで移送されることもあります。
■逮捕後48時間以内に送検される
逮捕後48時間以内に、事件の管轄が警察から検察へと移ります。これを送検と言います。被疑者の身柄も護送車で検察庁管轄の拘置所へと移され、取調べの担当も検察官に変わります。
しかし拘置所は全国に8箇所しかなく、ほとんどの場合で送検後もそのまま留置所に留まることが多いため、実際には知らぬ間に送検されているということがほとんどでしょう。
■送検後24時間以内に起訴不起訴または勾留が決まる
検察庁に送検後、原則24時間以内は起訴不起訴が決定されます。ただし捜査期間の延長が必要な場合には、最長20日間まで勾留延長されることがあります。
一般的には最大の20日間まで延長されることがほとんどです。
目指すのは起訴前の釈放
起訴されると、99%以上が有罪判決となります。また起訴された時点で勾留されている場合、その後も引き続き2ヶ月の勾留に移行してしまいます。
従って、逮捕された場合に目指さなければならないのは、起訴前の釈放です。釈放される機会として、次の3つのパターンがあります。
■微罪処分
微罪処分となれば、最速1日で釈放されます。軽微な罪や初犯の場合には、罰金のみの処分となります。過失など悪質性のないものや、本人の反省が充分である、被害者の懲罰感情が少ない場合に適用されることが多くなります。
■勾留を免れる
逮捕後72時間以内には、勾留かどうかの処分が決まります。勾留が決定されてしまうと、最低でも10日間、最長20日間も留置所暮らしが延長されてしまいます。
勾留を免れるためには、裁判官に働きかけたり、準抗告の申し立てを行ったりすることで、裁判所に対して勾留却下や取り消しを求めることができます。手続きは弁護士が行ってくれます。
■不起訴
勾留が決まってしまっても、まだチャンスはあります。最終的に不起訴とならなければ問題ありません。不起訴を得るために必要となるのは、弁護士による弁護活動です。また、示談交渉などの被害弁済も判断材料となります。
家族が逮捕されたらするべき7つのこと
前述の通り、本人が逮捕されると自由な行動が制限されます。早期の釈放のため、本人に代わって家族ができることを紹介します。
■弁護士を呼ぶ
逮捕された場合、1度だけ無料で相談できる当番弁護士を呼ぶことができます。逮捕された本人だけでなく、家族も呼ぶことができます。本人が呼ぶ場合には、警察官に直接伝えることで依頼することができます。家族が呼ぶ場合には、逮捕された地域の弁護士会に電話しましょう。申込者の氏名、逮捕された人の氏名、性別、生年月日、拘束されている場所を伝えることで、当番弁護士の手配をお願いすることができます。
当番弁護士が無料となるのが1回目のみで2回目以降は有料となりますが、条件を満たせば法テラスによる援助も受けられます。また、長期3年を超える懲役・禁錮あたる罪の場合には、国選弁護人の制度が利用可能です。
また知り合いの弁護士がいる場合には、名指しで呼んでもらうことも可能です。
逮捕後72時間は、弁護士としか面会ができません。気も動転していて、知らぬ内に自分に不利なことを話してしまうこともあります。必ず弁護士を呼んで適切なアドバイスを受けましょう。
■示談交渉を試みる
事件の被害者がいる場合、示談の成立は微罪処分や不起訴に近づけることの出来る有効な手段です。親告罪の場合には、告訴が取り下げられて不起訴となります。弁護士を通すことで、冷静に示談交渉を進めることが可能です。
■身元引受書の作成を行う
被害者の心象ももちろんのこと、捜査機関の心象も非常に大切です。身元引受人となる親族がいることも、微罪処分の条件となります。また、職場の上司からの陳述書なども身元引受人の証明になります。職場への事情説明も兼ねて、必要があれば依頼しましょう。呼び出されたらすぐに駆けつけて、被疑者と一緒になって反省の態度を示しましょう。
■贖罪寄付を行う
被害者がいる場合には、示談の成立が反省の具体的な判断材料となりますが、薬物犯罪など被害者がいない事件の場合には、贖罪寄付などが有効となります。被疑者本人の名義で、家族が行うことも可能です。
参考:犯罪者の償いの形、贖罪寄付とは?
■面会時の衣服や現金の差し入れ
ここからは長期戦になる場合のサポートです。
逮捕後72時間以内は弁護士以外の面会は許可されませんが、それ以降であれば、1日1回10~20分ほど面会することができるようになります。家族と面会をすることで、被疑者の心の支えにもなります。
その際に、留置所生活で必要なものを差し入れすると良いでしょう。持ち込める私物は限られていますが、下着などの衣服や現金など生活に必要なものは問題ありません。お風呂や洗濯の回数が限られていますので、衣服の換えは重宝されます。また現金があれば留置所内で買い物ができますので、必ず添えてあげましょう。
直接渡す方法以外にも、弁護士に代わりに渡してもらうか、郵送で送る方法もあります。
ただし組織犯罪が疑われる場合には、接見禁止となり、弁護士以外の人物の面会や差し入れは禁止されてしまいますので注意が必要です。
■各種サービスの解約
長期戦となる場合、携帯電話や家賃などの月額の支払が滞り、社会的な信用を失ってしまうかもしれません。予め解約などの手続きをしておくと良いでしょう。
■証拠品還付の手続き
後々の話にはなりますが、証拠品として押収されたものの還付手続きが必要となります。関連した人物のパソコンや携帯電話が押収されることもありますので、可能性として家族の私物も押収されることもあります。弁護士を通して還付請求を行うことも可能です。
前科はつかなくても逮捕歴(前歴)はつく
裁判で有罪判決がでない限り、いわゆる前科はつきませんが、逮捕歴は残ります。逮捕歴は捜査機関に一生残るものですが、他人が知りうることはなく、日常生活に支障を及ぼすことはありません。
ただし、将来的に再度犯罪を起こして逮捕された場合には、再犯扱いとなり有罪となる可能性が高くなります。特に関連性の高い犯罪を起こすほど、その確率は高くなります。弁護士の力量によっては、初犯で済むこともあります。
一方で、前科がついてしまうと職業の制限や海外渡航の制限が発生します。早期に弁護士に依頼して、起訴前の釈放を目指すことが大切です。