連帯債務では、複数の債務者がそれぞれ独立して全額弁済の義務を負うことになります。債務者同士の関係は対等で独立しているため、債務者の一人に生じた事由は他の債務者に影響を及ぼさない相対効の原則をとっています。しかし例外として互い影響を及ぼし合う絶対効も存在します。
連帯債務を理解する上で大切な、相対効と絶対効について説明します。
連帯債務の例外~7つの絶対効~
連帯債務者は、一人ひとりが独立して債務を負うため、誰か一人の契約に何かあっても他の人の契約には影響を及ぼさないとしています。これを相対効といいます。
例えば、連帯債務者の一人にだけ支払期限の猶予を行ったからといって、その他の債務者の期限も猶予されるわけではありません。また、連帯債務者の一人が未成年のため契約取り消しになったとしても、他の債務者にはなんら影響を及ぼさず、引き続き債務を負わなければなりません。
相対効・・・他の債務者に影響を及ぼさないこと(連帯債務の原則)
絶対効・・・債務者全員に影響を及ぼすこと(連帯債務の例外)
連帯債務は相対効が基本原則ですが、例外として下記の7つの場合はそれぞれに影響し合います。これらは相対効に対して、絶対効とよばれます。
債権者Aさんに3,000万円の連帯債務を負っている、BさんCさんDさんを例に説明します。BさんとCさんとDさんは、内々で1:1:1の負担割合を決めているとします。
■弁済
債務者の一人が債権者に一部または全額弁済した場合、当然ですが全員の連帯債務は弁済額だけ減ることになります。例えばBさんがAさんに3,000万円全額支払った場合、BさんだけでなくCさんDさんの債務もなくなります。Bさんが1,000万円支払った場合、全員の連帯債務は2,000万円にまで減ります。Bさんの債務がなくなるわけではありません。ただしBさんは自分が支払った額÷3の金額をCさんDさんに求償することができます。
■相殺
債務者の一人が反対債権を持っている場合、債務が相殺されます。相殺された額だけ他の債務者の弁済も免除されます。例えば債務者の一人であるBさんがAさんに2,400万円の反対債権を持っていたとします。AさんとBさんが債権を相殺した場合、全員の連帯債務は600万円に減額されます。
Bさんが相殺しない場合は、変な感じがしますがCさんやDさんはBさんに代わってBさんの負担額だけ相殺することができます。Bさんの負担額が1,000万円だとするとその分だけ相殺され、連帯債務は2,000万円に減額されます。
どちらのパターンでもBさんは相殺した額÷3の額を、CさんとDさんにそれぞれ求償することができます。
■請求
債権者が債務者の一人に法的手続きによる請求を行った場合、その効果は債務者全員にも及ぶことになります。
例えばAさんがBさんに支払督促を送ったことでBさんの時効が中断しました。この時点でCさんDさんの時効も中断することになるのです。
ただし、請求以外の時効中断事由はすべて相対効となります。例えば、債務者の一人が債務の承認をして時効が中断しても、他の債務者の時効は中断されません。
■更改
債権者と債務者の一人の債務要素が契約変更された場合、他の債務者の契約の効力もなくなります。例えばAさんとBさんの債務契約が、「Bさんは3,000万円相当の車をAさんにプレゼントする」という契約に変更した場合、CさんとDさんの債務はなくなります。ただしBさんはCさんDさんに1,000万円ずつ求償可能です。
■混同
債権者と連帯債務者に混同が起きた場合、債務者全員が弁済を免れることになります。例えば債権者Aさんと債務者の一人Bさんは実は親子で、Aさん死亡によりBさんに債権が相続されたとします。するとBさんは債務者であると同時に債権者にもなるので(混同)、債務はすべて弁済されたとみなされます。これに伴い他の債務者も弁済を免れることになります。このときBさんは全額負担していることになるので、CさんとDさんに多く負担した分を求償することができます。
■免除
債権者が債務者の一人に対して債務全額免除をした場合、他の債務者は、免除を受けた債務者の負担額だけ債務を免れることができます。例えばAさんがBさんの債務を免除した場合、CさんとDさんはBさんの負担額(1,000万円とする)だけ弁済を免れますので、連帯債務は2,000万円に減額されます。
■時効の完成
債務者の一人の時効が成立した場合、他の債務者は、時効が成立した債務者の負担額だけ債務を免れることができます。例えばBさんの債務の時効が成立した場合、CさんとDさんはBさんの負担額(1,000万円とする)だけ弁済を免れますので、連帯債務は2,000万円に減額されます。