裁判員制度とは? 選ばれる基準や禁止事項について | 弁護士の選び方 | 弁護士がおすすめする東京・千葉・埼玉・神奈川の法律事務所
2017年11月10日

満20歳以上の人であれば、誰でも裁判員になる可能性があります。今まで法律とは縁がなかったのに、突然人の一生を決める審理に参加させられるものですから、できれば避けて通りたいと思う人も多いのではないでしょうか。
あなたもいつ裁判員に選ばれるかわからない、裁判員制度について紹介します。

裁判員制度とは

裁判員制度は平成21年5月21日より開始された、国民が裁判に参加する制度です。裁判員に選ばれた国民は、実際に刑事裁判に参加して、裁判官とともに判決や量刑(懲役◯年・執行猶予◯年など)を決めていきます。裁判員制度を通して、国民の司法に対する理解を深めることだけではなく、国民の感覚を反映させることで冤罪を防止するなど、司法の適正化を図ることを目的としています。

裁判員裁判の対象となる事件

裁判員裁判の対象となるのは、地方裁判所で行われる刑事事件のうち下記のように定められている重大犯罪です。ほとんどが人の命に関わるような事件です。

① 死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件
例:殺人、身の代金拐取、強盗致傷・強盗傷人、強制わいせつ致死傷、強姦致死傷、爆発物使用、外患誘致、現住建造物等放火、水道毒物混入致死、通貨偽造、覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反など

② 法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの
例:傷害致死、危険運転致死、遺棄致死、特別公務員職権濫用致死、建造物等損壊致死など

ただし、裁判員本人やその家族に危害が加わる恐れのある場合や、長期化する可能性のある事件については対象外となります。

どのようなことをするのか

裁判員は、裁判への出席や判決についての評議、判決の決定までを行います。
裁判への出席
刑事裁判では、事件についての検察側・被告側双方の立証や、証人や被告人への質問が行われます。ここでは実際に、裁判員も質問することができます。
次に法的な見解が述べられる弁論手続が行われ、検察による論告・求刑、それに対する弁護士の弁論、最後に被告人の最終陳述が行われます。
評議・評決
裁判で聞いた内容をもとに、他の裁判員や裁判官とともに判決の内容を決めていきます。判決について全員の意見が一致しなかった場合には、多数決で決められますが、必ず多数派に裁判官が1名以上いなければなりません。
判決宣告
評議で決めた判決内容を、法廷で裁判長が宣告します。この判決宣告をもって、裁判員としての役割が終了します。
裁判員裁判は地方裁判所で行われる第一審のみが対象となりますので、判決が不服として被告側が控訴した場合には、後日裁判官のみで控訴審・上告審が行われることになります。

審理期間は5日前後

裁判員裁判対象事件では、迅速に審理を行うため、必ず公判前整理手続というものが取られます。公判前整理手続とは、公判(刑事裁判のこと)が始まる前に行われる、裁判官・検察官・弁護人の三者による要点整理の話し合いのことであり、これによりスムーズに審理を進めることができるようになります。実際に裁判員裁判は5日前後で終わるようです。

日当や労災が出る

裁判員や裁判員候補者は非常勤の裁判所職員として扱われますので、日当・旅費の支給や労働災害の補償があります。日当は稼働時間に応じて8,000~10,000円以内で決められます。また、裁判所に来るまでに事故にあってしまった場合などには、補償を受けることができます。

どのようにして裁判員は選ばれるのか

平成27年は9,000人程の裁判員・補充裁判員が選ばれました。確率的には0.007%とかなりレアな存在であることがわかります。裁判員は大きく3つの段階に分けて選任されていきます。

満20歳以上の日本国民から選ばれる

裁判員の対象となるのは、選挙権を持つ満20歳以上の日本国民です。毎年各市区町村の選挙人名簿(選挙権を持つ住民の名簿)から、抽選でランダムに選ばれます。この時点では大体1/400の割合で選出され、各地方裁判所が管理する名簿に登録されます。
さらにこの名簿の中から下記の手続きを踏んで裁判員が決められていきます。

11月頃に名簿記載通知が届く

上記の名簿に登録された人には、裁判所より「名簿記載通知」というものが届きます。例年11月に対象者へ送られており、翌年の2月から1年の間に行われる裁判員裁判の参加候補者の候補者(ややこしい)となったことが知らされます。
通知とともに、辞退の希望や禁止事由に関する調査票も送られ、調査事項に該当する場合には、返信することで辞退希望の連絡ができます。
原則辞退はできませんが、下記に該当する場合には辞退が認められます。

裁判員になれない人 辞退してもよい人 辞退が許されない理由の例
・成年被後見人、被保佐人
・心身に故障があり任務の遂行が難しい人
・禁錮以上の刑に処せられた人
・逮捕、勾留中の人
・2年以内に懲戒免職の処分を受けた人
・義務教育を終えていない人
・国会議員、国務大臣、国の行政機関の幹部職員
・都道府県知事、市区町村長
・法曹職(裁判官、検察官、弁護士)
・大学法学部の教授、准教授
・自衛官
・担当する事件の被告人や被害者本人、またはその近親者
・証人など事件の関係者
・その他裁判所が不適切と判断した人
・満70歳上の人
・学生
・重い病気や怪我を負っている人
・裁判員や検察審査員の経験者
・妊娠中または出産後8週以内の人
・家族の介護や看病
・子どもの養育
・災害被災者
・遠隔地であり裁判所へ行くのが困難
・参加することで著しい損害が発生する恐れがある
など
・仕事が多忙である
・有名人である

名簿通知を受けた人の約3割が、上記いずれかに該当しているとして辞退の申し出をしています。調査票に返信義務はありませんので、この時点で必ず辞退の連絡をする必要はありません。
後になって辞退しなければならないことがわかった場合には、裁判の6~8週前に送られてくる質問票で辞退の旨を返信すれば問題ありません。
また参加が難しい特定の時期がある場合には、最大2ヶ月まで申し出が可能です。

裁判の6~8週前に呼出状が届く

裁判所の名簿の中(辞退が認められた人を除く)からさらにランダムで裁判員候補者が絞られます。名簿に記載されている約半分の人が候補者として選ばれています。
選ばれた候補者には、裁判が始まる6週間前までに具体的な日程の通知(呼出状)が届きます。一緒に質問票も送られるので、最終的な参加の可否について返信する必要があります。
裁判員候補者となった人は、最終選任手続きのために実際に裁判所へ行かなければなりません。

地方裁判所での最終選定

裁判員候補者は、呼出状に記載された日時に、住民票がおいてある地域管轄の地方裁判所の本庁へと出頭しなければなりません。服装についての規定は特にありませんので、私服でも問題ありません。
当日体調不良などでどうしても出頭できない場合には、裁判所へ電話で連絡するなど対応が必要です。無断で欠席してしまうと、10万円以下の罰金となってしまう可能性もあります。
選任手続きでは、裁判員制度の概要や事件についての説明を受けた後に、改めて辞退を希望するかが確認されます。そして辞退者以外の中から最終的に6名が抽選で選ばれます。
また、同時に最大6名の補充裁判員も選ばれます。補充裁判員は、裁判員が審理中に体調不良などで参加できなくなった時のための補欠要員です。補充裁判員も、裁判員と同じように裁判や評議に参加しますが、判決の決定権はありません。

禁止されていること

裁判員になると、いくつか注意しなければならないことがあります。

質問票や選任手続きにおいて嘘をついてはいけない

裁判所から送られてくる調査票や質問票に虚偽の事実を記載した場合には、50万円以下の罰金となる可能性があります。また選任手続きの際に嘘をついてしまった場合にも30円以下の罰金が課せられてしまうこともあります。その場しのぎの嘘はやめましょう。

任期中は裁判員であることを公にしてはいけない

自分が担当する裁判員裁判が終わるまでは、自分が裁判員や裁判員候補者に選ばれたことを不特定多数の人に知られてはいけません。不特定多数ですので、家族や会社の上司には知られても問題ありません。例えばSNSやブログなどへの書き込みは、誰でも目にする可能性があるために禁止されています。

守秘義務がある

基本的に法廷外で見聞きしたことは、守秘義務の対象となります。例えば、判決を決める評議で話された内容や、被害者や被告人のプライバシーに関わることなど、裁判員でしか知り得ない情報は、誰にも話してはいけません。
なお法廷自体は一般公開されていますので、裁判中に話された内容については問題ありません。

年々辞退率が上昇している

平成21年の裁判員制度開始から8年、裁判員候補者の辞退率の上昇や選任手続きへの出席率の低下が問題となっています。平成27年においては、呼出状を受けた裁判員候補者の64.9%の人が辞退をしており、事前に辞退の申し出をしていないのにも関わらず選任手続きを欠席した人は32.5%と、過去最悪の参加率となっています。
理由として考えられているのは、70歳以上の高齢者の増加や企業の人手不足です。また、メディアでも取り上げられることが少なくなったため、世間の関心も低下していることも一因として考えられています。
一方で、実際に参加した人の感想は前向きなものが多く、事前アンケートでは半分近くの人ができれば参加したくなかったと回答していますが、任務を終えた後では95%以上の人が良い経験になったと認識を改めています。
「人生観が変わった」「貴重な体験だった」という意見もあります。裁判員に選ばれた際には、嫌がらずに積極的に参加してみてはいかがでしょうか。

参考サイト:「裁判員制度」http://www.saibanin.courts.go.jp/