逮捕と勾留の種類と要件とは?二つの違いについて | 弁護士の選び方 | 弁護士がおすすめする東京・千葉・埼玉・神奈川の法律事務所
2017年11月1日

刑事事件の犯人だと疑われる人は、逮捕や勾留によって身柄が拘束されてしまうイメージがありますが、実は事件の大半は身柄拘束が伴うものではなく、罰金で済んだり、被疑者在宅で捜査が進められたりしています。
刑事事件における逮捕や勾留には、決められた手続きがあり、要件を満たさない限り起こることはありません。しかし一旦、逮捕・勾留となり身柄が拘束されてしまうと、長期間出て来られなくなることがほとんどです。
今回は、逮捕や勾留の種類や要件についてまとめました。逮捕と勾留の違いについても紹介します。

逮捕と勾留とは

逮捕や勾留は、刑事事件において必ず取られる手続きではありません。順を追って説明していきます。

身柄事件と在宅事件

刑事事件の進め方には、大きく分けて身柄事件と在宅事件の2つがあります。
身柄事件とは、被疑者の逃走や証拠隠滅を避けるために、逮捕や勾留により強制的に身柄を拘束しながら捜査が進められる事件をいいます。
在宅事件は、逃走や証拠隠滅のリスクが低いために、被疑者を拘束せずに捜査を進める事件をいいます。被疑者は必要に応じて警察署や検察庁から呼び出しを受けますが、一旦は普段通りの生活を送ることができます。
逮捕や勾留は、身柄事件において行われる手続きです。平成28年度の犯罪白書によると、身柄事件となるのは全被疑者の35.5%であり、意外にも半数以上が逮捕の伴わない事件であることがわかります。身柄事件となるか否かは捜査機関の判断に委ねられますが、罪状として多いのは、恐喝や覚醒剤取締法違反です。
身柄事件には手続きにタイムリミットが存在するため、最長23日以内に起訴か不起訴かの結論がでますが、在宅事件の場合、その制限がないために長期化してしまうことも少なくありません。

身柄事件のタイムリミット

身柄事件が起きると、事件の被疑者は最大2段階の身柄拘束を経て起訴へと至ります。2つのうち、短期間(最長72時間)の身柄拘束を逮捕、長期間(最長20日間)の身柄拘束を勾留といいます。
身柄の拘束は人権に関わる問題であるため、時間制限があり、必ず長期間の勾留前に先立って、短期間の逮捕を行わなければならないという逮捕前置主義が取られています。まずは短時間の逮捕を行い、捜査が足りなかった場合には追加で勾留という措置が取られるようにしているのです。
例えば、強盗の疑いで逮捕された後に、強盗の事実はなく殺人があったことが明らかになった場合、そのまま勾留に進むことはできません。いきなり勾留となると、最長20日間拘束される可能性もあるため、被疑者にとって不利になります。改めて殺人の容疑で逮捕の手続きを取る必要がありますが、拘束時間の短い逮捕から始めることで、被疑者の人権を保護することができるという意図があります。ただし事件の追加は可能で、強盗で逮捕した後に、強盗+傷害を理由に勾留請求することは可能です。
このような被疑者保護の措置がありますが、実務上では身柄事件において勾留まで進むのは全体の9割以上であり、ほとんどのケースで10日以上は身柄が拘束されてしまいます。

逮捕の種類とその要件

逮捕には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の3つの種類があります。多くのケースが通常逮捕であり、その次に多いのが現行犯逮捕、緊急逮捕は1割程度とされています。
それぞれの要件について説明します。

通常逮捕

通常逮捕とは、裁判官によって発行される逮捕令状を元に行われる逮捕です。逮捕状の請求は、警察や検察によって行われ、裁判官が逮捕の理由と必要性があると判断した場合に発行されます。
逮捕の要件として、罪を犯した疑いがあり、かつ、被疑者逃走や証拠隠滅の恐れがあることが挙げられます。恐喝罪や覚醒剤取締法違反が身柄事件となることが多いのは、被害者を再度脅して証拠隠滅したり、逃走して時間を稼ぎ、薬物反応をなしたりする恐れがあるためです。
また、基本的に30万円以下の罰金、拘留、科料にあたる軽微な犯罪(過失傷害罪や侮辱罪)は、通常逮捕が認められません。ただし住所不定であったり出頭に不当に応じなかったりする場合には認められます。
逮捕状の請求に対する却下率は0.1%以下であり、逮捕状請求がされた時点で逮捕の許可はほぼ下りるものと考えて良いでしょう。

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは、犯罪があったその場で拘束されることをいいます。逮捕状も必要がなく、一般人にも逮捕が可能です(私人逮捕)。ただし私人逮捕の場合、上記に挙げた軽微な犯罪の場合には、犯人が逃走の恐れがあるか、または住所や身元が不明な場合に限られます。

緊急逮捕

緊急逮捕とは、重罪の犯人を逮捕状なく拘束できる一時的な措置です。逮捕後には直ちに逮捕状請求が必要となります。死刑、無期・長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯した疑いが充分にあり、やむを得ず逮捕状発行が間に合わない場合にのみ、逮捕の理由を告知することで緊急逮捕が可能となります。

勾留の種類とその要件

勾留とは検察官に管轄が移ってからの身柄拘束です。逮捕後48時間以内に、被疑者は検察官に送致されます。その後24時間以内に、検察官は起訴不起訴の判断をしなければなりません。しかし24時間では判断が出来ずに、さらに捜査期間が必要な場合には、検察官から裁判官へと勾留請求がされます。
勾留は、起訴の前後で期間や手続きが変わってきます。

勾留の要件

起訴の前後関わらず、勾留が認められるには、次の3つの要件を満たす必要があります。
犯罪の嫌疑
犯罪の嫌疑が相当にあることが必要です。相当とは、逮捕状で逮捕したときよりもさらに疑いの度合いが高い必要があります。なお、逮捕や勾留に必要な、犯罪の嫌疑の程度(どれだけ疑わしいか)は、逮捕<勾留<緊急逮捕の順で高くなります。
勾留の理由
勾留の理由として認められるのは、被疑者が逃亡や証拠を隠滅する恐れがあること、軽微な犯罪の場合には住所不定であることが必要です。
勾留の必要性
勾留をすることで得られる利益が、生じる不利益を上回る場合にのみ、勾留が認められます。

勾留の期間

起訴前の勾留期間は原則10日間です。しかし余罪の捜査などやむを得ない事由でさらに時間が必要な場合には、裁判官に勾留延長を申し出ることで、最長10日間の勾留延長ができます。やむを得ない事由とありますが、勾留は延長されることが一般的です。 起訴された後については、勾留期間は2ヶ月となります。さらに裁判官が必要と認めた場合には、1ヶ月毎に勾留期間が更新されます。基本的に更新回数は1回ですが、下記の場合には無制限となります。

勾留更新が無制限の場合
・死刑、無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪
・長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪の常習犯
・証拠隠滅の嫌疑がある
・住所や身元が不明

勾留の手続き

起訴前の勾留は、逮捕前置主義により必ず逮捕が先立って行われていなければなりません。送検後、24時間以内に検察官が裁判官へと勾留の請求を行います。裁判官は、被疑者に直接勾留に関しての陳述を求める勾留質問を行い、これを踏まえて勾留が妥当かを判断します。とはいえ勾留請求はまず却下されることはありませんので、勾留質問は事務的な手続きだと思っても良いでしょう。その後、勾留の決定通知が弁護士や法定代理人にもなされます。
起訴後については、特に手続きなく自動的に2ヶ月の勾留が開始します。