残業代の計算方法~固定給・歩合給・遅延損害金・付加金~ | 弁護士の選び方 | 弁護士がおすすめする東京・千葉・埼玉・神奈川の法律事務所
2017年8月30日

残業代(割増賃金)請求では、未払いの残業代に加えて、未払いのペナルティとして遅延損害金(遅延利息)や付加金を請求することができます。遅延損害金(遅延利息)や付加金は、必ず保証されるものではありませんが、交渉の材料として算定しておくべき項目です。
この記事では、残業手当を始めとした割増賃金や、遅延損害金、付加金の計算方法について紹介しています。

割増率

残業代は通常の賃金よりも25%割増して支給されます。同様に、深夜労働や休日労働に対しても割増賃金が発生しますが、それぞれ割増率が異なってくるため、計算の際には注意が必要です。

残業手当の割増率について

残業手当は、基本的に25%割増して計算されます。月の法定外残業時間が60時間を超えた場合には、50%割増となります。ただし中小企業については、60時間を超えても変わらず25%割増のままです。

法定外残業
60時間未満
法定外残業
60時間以上※
残業手当の割増率 25%以上 50%以上
※中小企業除く

深夜手当と休日手当の割増率

深夜手当とは、深夜22時~朝5時までの労働に対して発生する割増賃金です。25%の割増で計算されます。
休日手当は、法定内休日(週1回又は4週に4回以上)に発生する割増賃金です。会社規定の休日に労働をした場合、35%の割増賃金となります。
深夜手当も休日手当も、残業手当とは別途算定されますので、法定外残業となっている場合には、それぞれ割増率に25%を加えて計算します。

法定労働時間内 法定労働時間外
深夜手当の割増率 25%以上 50%以上
法定外休日の割増率 なし 25%以上
法定内休日の割増率 35%以上 60%以上

残業代の計算方法

残業代などの割増賃金や遅延損害金、付加金は、それぞれ下記の表のように算定することができます。
割増賃金は時間あたりで計算されるため、月給の場合、まずは時間あたりの賃金を計算する必要があります。1分単位、15分単位なのかは、企業によって異なりますので、就業規則などで確認しましょう。また、歩合が発生する給与体系の場合、固定給と歩合給に分けて計算する必要があります。

残業代計算

A.固定給の割増賃金
(月額基本給÷月の所定労働時間)×(1+割増率)×残業時間
      1時間あたりの所定賃金
B.歩合給の割増賃金
(歩合給÷月の実働時間)×割増率×残業時間
   1時間あたりの歩合給
C.遅延損害金・遅延利息金
在職中・・・年6%(使用者が個人事業主の場合は5%)
退職後・・・年14.6%
D.付加金
未払い残業代(A+B)と同額を上限

A.固定給の割増賃金

例)月額基本給:25万円
日の所定労働時間:8時間
年間休日:110日
残業時間:20時間

月額基本給とは、各種手当(通勤手当、住宅手当、家族手当、子女教育手当、慶弔金、賞与など)を除いた金額をいいます。 残業代は時間単位で計算する必要があるため、まずは1時間あたりの所定賃金を計算していきます。
1時間あたりの所定賃金は、月額基本給を月の所定労働時間で割ることで算出することができます。月の所定労働時間は、年間の勤務日数から平均して求めます。
月の所定労働時間=(365日-年間休日数)÷12ヶ月×1日の所定労働時間
上記の例を用いると、(365日-110日)÷12ヶ月×8時間=170時間と算出することができます。
1時間あたりの賃金=月額基本給÷月の所定労働時間なので、25万円÷170時間=1470.588・・・となります。端数が出た場合には、小数点第一以下を四捨五入して、1,471円とします。
最後に、割増率と残業時間を乗じて、1,471円×1.25×20時間=36,775円と算出することができます。

B.歩合給の割増賃金

例)歩合給5万円   実働時間:190(170+20)時間

固定給とは別に歩合給が支給された場合、固定給とは別の計算方法を用いる必要があります。時間あたりの歩合給は、残業時間も含めた実働時間を割ることで計算していきます。
例を用いると、5万円÷190時間=263.15・・・四捨五入して263円と算出できます。
これに割増率を乗じていきますが、固定給とは異なり「1」の部分は乗じません。固定給の場合、残業時間20時間分の給与はまだ1円も支払われていないために「1.25」を乗じていますが、歩合給の場合には、すでに残業時間分含めた通常割合の歩合給5万円が支払われているため、残業時間の割増分「0.25」のみを乗じれば良いことになります。
歩合給の割増賃金は、263円×0.25×20時間=1,315円となります。
AとBを合計すると、残業代は38,090円と算出することができます。

C.遅延損害金・遅延利息金

例)未払い残業代:2月分3万円
賃金支払日:3/25
退職日:4/30
算定日:6/1

残業代の未払いについても、債務不履行として遅延損害金(遅延利息金)を請求することができます。在職中の遅延金損害は、年6%の割合(使用者が個人事業の場合には年5%)で発生します。期間は賃金支給日の翌日から算定できます。
退職日以降の遅延利息は年14.6%に上がり、退職日の翌日から起算できます。
例では、在職中の遅延金として、3/26~4/30までの36日間分を請求できます。
3万円×0.06×36/365=177.53・・・四捨五入して178円と算定できます。
退職後の遅延金は、5/1~6/1の32日間分となるので、
3万円×0.146×32/365=384円となります。
合計して、遅延損害金は562円と算定できます。

D.付加金

付加金とは、労働基準法に定められている未払い賃金に対する罰則のようなもので、裁判所に認められた場合にのみ請求できる項目です。未払い分の残業代と同じ額を限度として請求することができます。
企業に悪質性が見られるようなケースで認められることがあります。

請求できる期間

未払い分の賃金は、基本的に過去に遡って2年まで請求が可能です。起算点は、賃金支給日と考えられています。ただし時効が中断するようなこと(裁判を起こす、支払い義務を認める、一部支払う)があれば、その時点で一度カウントがリセットされますので、2年以上前のものも請求できる可能性があります。
また、残業代が発生しているのを知っていたのに支払わなかった、勤怠管理をあえてしてこなかったなど、企業に悪質性が認められる場合には、不法行為に基づく損害賠償として請求が認められることもあります。不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は3年なので、実質3年分の未払い請求が可能となります。
なお、退職金の場合は5年にまで伸びます。

時効消滅年数 起算点
賃金 2年 賃金支給日
損害賠償 3年 請求できると知った日
退職金 5年 退職金支給日

朝型残業も支給の対象

時間帯関係なく、法定労働時間を超えて働いた分は割増賃金が支払わなければなりません。そのため始業時間に先立つ朝型残業も支払対象になります。ただし交通事情など個人的な理由による出勤の場合は労働時間としてカウントされません。あくまで会社指揮下での出社が対象となります。