【被害届の出し方】誰がどこに出せば良い?告訴との違い | 弁護士の選び方 | 弁護士がおすすめする東京・千葉・埼玉・神奈川の法律事務所
2017年8月2日

窃盗や暴行など、もしも何らかの犯罪に巻き込まれた時、まずは警察に被害を訴えることが事件解決の緒となります。
テレビなどで良く聞く方法に「被害届」がありますが、いざ提出しようと思っても何をどうしたら良いのかわからないことも多いのではないでしょうか。
この記事では、「被害届」の出し方や、似た言葉である「告訴」との違いについて解説しています。中には被害届だけでは扱ってもらえない事件もあるので注意が必要です。

被害届と告訴の違い

警察が事件の捜査を開始するためには、捜査のきっかけ(端緒)が必要です。捜査開始のきっかけの一つが「被害届」の提出です。被害届を出すことで、警察に事件の存在を知らせて、捜査開始のきっかけを与えることができます。ただし被害届が受理されたからといって必ず捜査が行われるわけではなく、捜査を開始するか否かは警察の判断によって決められます。

これに対して捜査の義務が発生するのが「告訴」です。告訴には犯罪を捜査機関に知らせるだけでなく、犯人を罰して欲しいという意思表示も含まれており、受理された場合、捜査機関は速やかに捜査を開始しなければなりません。その分、被害届よりも受理されるハードルが高くなります。一般的には事前に告訴状を作成して捜査機関に提出します。

被害届と告訴の効果の違い

被害届 犯罪の被害にあったことを捜査機関に申告する書面。
告訴 犯罪の被害にあったことを捜査機関に申告し、犯人の処罰を求めること。

何らかの犯罪に巻き込まれてしまい、かつ犯人を罰してほしいという場合には、被害届の提出ではなく告訴状の提出の方が適しているといえます。ただし告訴状が受理されるには、形式上の不備がないか、客観的にみた時に犯罪として成り立つかなどいくつかの要件を満たす必要があります。

参考:告訴と告発の違い
告訴と告発は、ともに犯罪の被害を捜査機関に報告して、犯人の処罰を求めることをいいますが、誰が行ったかによって区別がされています。告訴は被害者本人や法定代理人などの告訴権者が行ったとき、告発は告訴権者以外の第三者が行ったときをいいます。

被害届の出し方

被害届を出す手段には、下記の2つのパターンがあります。

・予め必要事項を記載した書面を準備して、交番や警察署に提出する
・交番や警察署に行って、所定の用紙に必要事項を記入又は聴取を受けながら警察官が代筆する

基本的には自分で書面を準備することが望ましいですが、難しければ情報を整理してから交番や警察署へ行って用紙をもらい、現地で記入をしましょう。口頭で説明したものを警察官が代筆することもあります。

必要記載事項

事件によって記載内容も変わってきますが、おおよそ下記の事項をまとめておきましょう。書面には印鑑が必要です。

被害届必要記載事項
・被害者の住所、氏名、年齢、職業
・被害のあった日時、場所
・被害の詳細
・(あれば)被害金品
・(わかれば)犯人の住所、氏名、特徴
・その他参考資料(遺留物や医師の診断書など)

提出先

被害届の受付窓口は交番や警察署です。どこの地域の交番・警察署に提出すればよいかについて、特に決まりはありませんが、基本的には事件が起きた地域の交番や警察署へ提出するのが良いでしょう。また事件の大きさによっては交番では対応できないケースもありますので、交番と警察署どちらにも提出可能な状況であれば、はじめから警察署へ提出することで、たらい回しとなるのを防ぐことができます。

提出できる人

被害届を出すことができるのは、基本的には犯罪の被害者本人です。被害者が未成年者や成年被後見人の場合には、法定代理人である親権者や後見人の付き添いを求められたりすることもあります。明確な決まりはないため、提出先の警察署の判断によります。
また弁護士が代理で作成し提出することも可能です。ただし被害届はあくまで被害の報告に留まりますので、捜査を積極的に行って欲しい場合には告訴状の作成を依頼した方が良いでしょう。

提出期限

被害届の提出期限は、事件の公訴時効に間に合うまでです。公訴時効とは、事件ごとに定められた期間を過ぎると公訴(検察が有罪判決を求める訴え)を起こせなくなってしまう期限のことをいいます。被害届は、捜査して公訴を起こす前段階なので、実際には公訴期限に先立って提出されていなければなりません。公訴時効を迎える前日に提出しても、捜査の時間もなく起訴の手続きには間に合わないのです。
公訴時効は事件の法定刑の重さによって下記のように定められています。なお時効の起算点は、犯罪行為が終わった時となります。

罪の種類(犯罪例) 公訴時効期間






死刑(殺人罪、強盗殺人罪) なし
無期懲役・禁錮(強制わいせつ致死罪、強姦致死罪) 30年
長期20年の懲役・禁錮(傷害致死、危険運転致死罪) 20年
上記以外(過失運転致死罪、業務上過失致死罪) 10年
















死刑(外患誘致罪、現在建築物等放火罪) 25年
無期懲役・禁錮(通貨偽造罪、強盗強姦罪、身の代金目的略取罪) 15年
長期15年以上の懲役・禁錮(強盗罪、傷害罪) 10年
長期15年未満の懲役・禁錮(窃盗罪、詐欺罪、業務上横領罪) 7年
長期10年未満の懲役・禁錮(水道汚染罪、未成年者略取罪) 5年
長期5年未満の懲役・禁錮・罰金(名誉毀損罪、過失致死傷罪、暴行罪、器物損壊罪) 3年
拘留・科料(侮辱罪、その他軽犯罪) 1年

被害届だけでは刑事事件にならない犯罪?

世の中のすべての犯罪が、被害届を出したからと言って直ちに刑事事件として立件されるわけではありません。違法性がない、立証が難しいなどの理由で門前払いされることもありますが、中には明らかに違法で悪質な犯罪であっても、被害届だけでは刑事事件として扱えない例外があります。
このような犯罪を親告罪といい、被害者が告訴、つまり犯人を処罰することを求めたときに限って、事件を公にし裁判を起こして犯人を処罰することができます。親告罪以外の犯罪を、非親告罪と呼び分けることができます。

親告罪

親告罪とは、犯罪被害者が捜査機関に告訴して初めて犯人を起訴できる犯罪のことを指します。被害届だけでは不十分で告訴して犯人の処罰を求めないと、罪に問うことができません。
親告罪となるのは、軽微な犯罪や親族間の問題、事件として取り上げられることで被害者本人の不利益に繋がる可能性がある犯罪です。刑事事件として取り上げるかどうかは被害者本人の意志に委ねられます。ただし告訴したからといって必ずしも捜査が開始されるわけではありません。
被害を訴えることができるのは、被害者本人と被害者の法定代理人である弁護士や保護者などの告訴権者に限られます。本人が死亡している場合には、生前の本人の意に反さなければ配偶者や親族が告訴することができます。知人友人など第三者による告発は認められません。

親告罪の例
名誉毀損罪、侮辱罪、誘拐罪、秘密漏示罪、過失傷害罪、器物損壊罪、親族間の窃盗・詐欺・恐喝罪、著作権侵害など

非親告罪

犯罪全般は非親告罪となります。親告罪とは異なり、本人による告訴がなくても刑事事件として捜査を開始し犯人を処罰することができます。ただし捜査機関が事件の存在を知っていることが前提ですので、一般的には被害届や通報などをきっかけに事件の捜査が開始されます。

非親告罪の例
殺人罪、傷害(過失)致死罪、危険運転致死傷罪、窃盗罪、詐欺罪、強盗罪、強制性交等罪(旧強姦罪)※など犯罪全般
※もともと性犯罪は親告罪でしたが、2017年7月の刑法改正により非親告罪化されました。

被害届が受理されないときには

警察も限られたリソースの中で動いているため、すべての事件に取り組めるわけではなく、どの事件に取り組むべきかの優先順位を付けざるを得ません。被害状況の説明が曖昧で事件の立証が難しいと、被害届自体が受理されないこともあります。特に軽微な事件や縁故関係のトラブルなどは、民事不介入の原則により当事者同士での解決を促されます。仮に受理されたとしても、告訴とは違って捜査義務が発生しないため、そのまま放置されることもありえるでしょう。
より被害届を受理されやすい状況を作るには、弁護士に相談して被害届を代理作成してもらうか、弁護士の付き添いのもと警察署に赴くと良いでしょう。
また、犯人を罰してほしいという感情が強い場合には、告訴に切り替えるのも一つの手です。ただし告訴状は被害届以上に受理が慎重になりますので、より弁護士のサポートが要されます。
被害届や告訴状を出したいと思ったら、まずは弁護士に相談して適切なアドバイスをもらってから、行動に移すことをおすすめします。