借金だらけの遺産を背負いたくない!相続放棄の申請方法 | 弁護士の選び方 | 弁護士がおすすめする法律事務所
2017年6月16日

故人は、時に理不尽な財産を残していくものです。財産の相続人は、巨万の富を得ることもあれば、自分とは全く関係のない負債を負うこともあります。しかし最悪な事態から逃れる方法として、相続の放棄があります。
相続を放棄することで、故人の遺産を引き継ぐ権利をはじめからなかったことにできます。ただし、財産についてのあらゆる権利を失うことになるので、借金だらけの財産だけでなく、プラスの財産についても放棄しなければいけない点で注意が必要です。 今回は、相続を放棄すると何が起きるのかについて、また相続放棄の申請方法についてまとめています。

相続放棄

承認と放棄

相続をどうするかについて、単純承認、限定承認、相続放棄の3つの選択肢があります。

単純承認

マイナス、プラス、すべての財産を受け継ぐ選択肢です。明らかに残された財産がプラスとわかる場合には、単純承認で問題ありません。相続開始から3ヶ月間何もアクションを起こさなければ、自動的に単純承認したとみなされます。

限定承認

プラスの財産はすべて、マイナスの財産はプラスの財産で賄える範囲で受け継ぐことのできる選択肢です。マイナスの財産がプラスの財産を上回っていた場合には、上回った分の負債は受け継がれません。プラスの財産が上回った場合には、そのまま受け継ぐことができます。残された財産がプラスになるのかマイナスになるのかわからない場合には、限定承認が有効な方法となります。

相続放棄

一切の財産を受け継がずに、相続人から外れることができる選択肢です。今回は、この相続放棄について詳しく説明します。

相続を放棄するのはどういう時?

相続によって、プラスの財産もマイナスの財産も否応なしに引き継がれることになります。場合によっては一方的に不利益を被ることもあるため、相続放棄の制度を利用することで無用のトラブルを防ぐことができます。
相続を放棄する具体的な理由として次のようなケースが考えられます。

負債が多く残っている

マイナスの方が多く残ってしまう場合には、相続の放棄をすることで降りかかった支払義務を失くすことができます。ただしもともと負債の連帯保証人だった場合には、支払義務から逃れることはできません。

骨肉の争いになりそうな時

残された財産は、遺言書があれば遺言書に従って分けられますが、ない場合には、遺産分割によって具体的な分前が決められることになります。基本的には関係者間での話し合いで決められますが、話がまとまらないと最終的には裁判で争われることになります。裁判にまでもつれ込むと相続人同士の人間関係は壊れてしまい修復も難しくなってしまいます。
このような遺産をめぐる親族間の争いを避けるために、相続放棄を選択するケースもあるようです。

そもそも遺産が不要である

遺産が不要であるために相続放棄するケースもあります。遺産がなくても不自由ない生活を送れている、引き継ぐものが自分にとって価値のない遺産であるなどの理由が考えられます。

遺産を集中させたい

相続人が複数いる場合、人数を減らすことで同順位の取り分を増やすことができます。特定の誰かに遺産を集中させることを目的として、相続放棄することもあります。
遺産分割の話し合いで取り分を指定する方法もありますが、負債については遺産分割できないため、法定相続に従って全員に割り当てられることになります。

相続を放棄するとどうなる?

相続放棄の影響は自分だけではありません。新たに相続人ができたり、代襲相続ができなくなったりします。

新たな相続人ができる

相続放棄することで、自分よりも後の順位の法定相続人が、新たな相続人となります。
例えば亡くなった方に配偶者も子もいなく、法定順位第二位の父母や祖父母が相続を放棄した場合、次順位の兄弟姉妹に相続権が渡ることになります。
新たな相続人へは特別連絡が行くわけではありません。債権者から請求書などが届くことで気づくことはあります。前の相続人に連絡義務はありませんが、もしも多額の借金を相続しなければならない場合には、新たな相続人にも相続放棄の手続をしてもらわなくてはなりません。相続放棄の手続期限は、自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内なので、トラブルを避けるためにも事前に知らせておくとよいでしょう。

法定相続の順位

順位 該当親族
常に相続人 配偶者
第一順位 子→孫→曾孫
(直系卑属)
第二順位
(上記がいない場合)
父母→祖父母→曾祖父母
(直系尊属)
第三順位
(上記がいない場合)
兄弟姉妹→甥姪

代襲相続は発生しない

代襲相続は、相続人の死亡や相続権喪失の際には、その子供に相続権が移る制度です。相続の放棄は、そもそも相続権がなかったものとみなされるため、代襲相続も発生しません。相続人である親が放棄したからといって子供に代襲相続されるわけではないのです。ただし親が放棄する前に死亡した場合には、子供に代襲相続されるため放棄が必要となります。

プラスの財産も引き継がれなくなる

一切の財産を放棄するわけですから、当然プラスの財産を引き継ぐこともできなくなります。もしも故人の預貯金などに少しでも手を付けてしまっていた場合は、相続放棄ができなくなってしまいます。

相続放棄の手続方法

相続放棄のためには、家庭裁判所への申述が必要です。相続放棄の申立書や自分の戸籍謄本の他にも、申述者が間違いなく相続人であることを証明するための書類が必要です。
例えば、法定順位第二位の父母が相続人であることを証明するためには、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」を取得して、亡くなった方の過去の戸籍を詳しく調べなければなりません。最新の戸籍には過去の情報は載らないため、過去分をすべて取り寄せて前妻(前夫)の子含めた直系卑属がいないかを確認する必要があります。
相続順位が後になるほど必要書類は多くなってしまいます。下記に、亡くなった方との関係ごとに必要書類をまとめています。

申述人 相続人本人
(未成年の場合は法定代理人)
申述期間 相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内
申述先 被相続人死亡時の住所地にある家庭裁判所
必要費用 ・収入印紙800円分/人
・返信用切手代
共通必要書類 ・相続放棄の申述書
・申し立て添付書類
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・申述人の戸籍謄本
配偶者
必要書類
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
子、孫(第一位)
必要書類
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
・代襲相続人の場合、被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本
父母、祖父母(第二位)
必要書類
・被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・被相続人の直系卑属の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
兄弟姉妹(第三位)
必要書類
・被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・被相続人の直系卑属の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
・代襲相続人の場合、被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本

相続放棄ができなくなってしまう例

下記では相続の放棄ができなくなってしまう具体例をまとめています。

3ヶ月以上経過してしまう

相続放棄の手続き期限は、相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内です。配偶者や子の場合は、被相続人の死を知ってから3ヶ月、父母や兄弟姉妹など次順位の法定相続人は、先順位の相続人が相続放棄したことを知ってから3ヶ月ということになります。
熟慮期間とも呼ばれるこの3ヶ月間で、承認するか放棄するかを決めなければならず、3ヶ月を過ぎると相続放棄の手続ができなくなります。
ただし特別な事情がある場合には、裁判官の裁量次第では熟慮期間の延長が認められることもあります。裁判所に延長の申し出をして認められる必要があります。

財産を一部でも使ってしまう

被相続人の預貯金など、財産の一部でも手を付けてしまった場合には、相続放棄はできません。例外的に被相続人の葬儀費用については財産から工面することが認められています。ただし身分相応の常識的な費用であることが条件です。

後から知った借金

基本的に一度でも承認してしまうと、相続放棄はできなくなります。死後3ヶ月以上経ってから多額の負債があることがわかったとしても、あとからやっぱり放棄したいということはできません。
しかし、被相続人と相続人が疎遠な関係であり、正確な財産状況を知るのが困難な状況にあった場合であれば、熟慮期間の起算を「相続財産の全部または一部の存在を認識したとき」とすることで、放棄が認められることがあります。つまり、死亡を知ったときではなく、多額の負債を知ったときから3ヶ月間は放棄が認められるということになります。ただし財産には全く手を付けていないことが条件となります。
ちなみに、後から莫大な財産があることがわかったとしても、一度した相続放棄は取り消すことができません。

裁判官の裁量

相続放棄の可否についての取り決めはありますが、絶対的なものではなく、実際には個別の状況を考慮して判断されることになります。場合によっては弁護士に力を借りることで可能になることもありますので、相続放棄について困ったことがあれば相談してみることをおすすめします。