ライプニッツ係数を利用した中間利息控除とは?債権法改正は? | 弁護士の選び方 | 弁護士がおすすめする東京・千葉・埼玉・神奈川の法律事務所
2017年5月11日

事故によって後遺症が残ってしまった場合や死亡者が出てしまった場合、怪我の治療費だけでなく、その後の人生に与える影響についても、補償を行う必要があります。特に将来の収入を補償するものを逸失利益といい、損害賠償の中でも高額になる項目です。
損害賠償は一括で支払われることになるために、先取りの利益が発生すると考えられています。これを中間利息といい、逸失利益の算出の際には、必ず中間利息を控除した額を算出する必要があります。その際に利用されるのがライプニッツ係数とよばれる指数です。
この記事では、逸失利益算出の際に用いられるライプニッツ係数について解説しています。

ライプニッツ係数

中間利息控除の算出

本来給与などの収入は月ごとなどの分割払いですが、損害賠償としてもらえる逸失利益は必ず一括で支払われます。数十年分のまとまった金額を先払いされた分、金利などの余分な利益が発生すると考えているために、その分を差し引く必要があります。これが中間利息控除です。

法定利率5%の複利式

逸失利益での中間利息は法定利率5%の複利式で計算されます。これはかなりインパクトの大きな数字です。
例えば本来は3年後にもらうはずの100万円を先にもらったとすると、元金100万円は3年後には100万円×1.05×1.05×1.05=115万7,625円の価値となり、15万7,625円の中間利息が発生すると考えられています。
この3年分の利息をあらかじめ控除することを中間利息控除といい、債権が3年後に100万円となるように計算されるため、現在の価値は100万円÷1.05÷1.05÷1.05=86万3,837円となります。

逸失利益の中間利息控除

逸失利益では、毎年一定額ずつ支払われることを想定して中間利息控除を計算しなければいけません。
年間100万円の逸失利益が3年分認められたとすると下記の計算が必要となります。
3年分の逸失利益
=(1年後に100万円となる債権額)+(2年後に100万円となる債権額)+(3年後に100万円となる債権額)
=(100万円÷1.05)+(100万円÷1.05÷1.05)+(100万円÷1.05÷1.05÷1.05)
=272万3,248円となります。

ライプニッツ係数

3年分であれば何とか自力で計算できますが、実際の逸失利益の対象年数は、事故以降働けるはずだった年数(労働能力喪失期間)のため、数十年の範囲で計算することになります。
先程の方法で算出していくと時間がかかりすぎるため、労働能力損失期間ごとに算出された中間利息控除係数を利用します。これをライプニッツ係数といい、年間の債権額に乗じることで逸失利益を計算することができます。
労働能力喪失期間3年の場合、100万円×2.723=272万3,000円とすぐに算出することができます。

ライプニッツ係数

労働能力
喪失期間
係数 労働能力
喪失期間
係数 労働能力
喪失期間
係数 労働能力
喪失期間
係数
67 19.239 49 18.169 31 15.593 13 9.394
66 19.201 48 18.077 30 15.372 12 8.863
65 19.161 47 17.981 29 15.141 11 8.306
64 19.119 46 17.880 28 14.898 10 7.722
63 19.075 45 17.774 27 14.643 9 7.108
62 19.029 44 17.663 26 14.375 8 6.463
61 18.98 43 17.546 25 14.094 7 5.786
60 18.929 42 17.423 24 13.799 6 5.076
59 18.876 41 17.294 23 13.489 5 4.329
58 18.82 40 17.159 22 13.163 4 3.546
57 18.761 39 17.017 21 12.821 3 2.723
56 18.699 38 16.868 20 12.462 2 1.859
55 18.633 37 16.711 19 12.085 1 0.952
54 18.565 36 16.547 18 11.690
53 18.493 35 16.374 17 11.274
52 18.418 34 16.193 16 10.838
51 18.339 33 16.003 15 10.380
50 18.256 32 15.803 14 9.899

労働能力喪失期間の定義

労働能力喪失期間は、症状固定から原則67歳までと定められています。ただし54歳以上は平均余命期間×0.5が労働能力喪失期間となります。
また未成年などの未就業者については、実際の就業開始時期を18歳(大学生の場合は22歳)として算出します。ライプニッツ係数は下記の表のようになります。

18歳未満のライプニッツ係数

年齢 幼児・児童・生徒・学生・働く意思と能力を有する者
労働能力喪失期間 係数
0 49 7.549
1 49 7.927
2 49 8.323
3 49 8.739
4 49 9.176
5 49 9.635
6 49 10.117
7 49 10.623
8 49 11.154
9 49 11.712
10 49 12.297
11 49 12.912
12 49 13.558
13 49 14.236
14 49 14.947
15 49 15.695
16 49 16.48
17 49 17.304

18歳未満のライプニッツ係数の算出方法

18歳未満のライプニッツ係数の表は、(就業終期までの年数分のライプニッツ係数)-(就業始期までの年数分のライプニッツ係数)で算出されています。
例えば10歳の子供の場合、就業終期つまり67歳になるまでの期間は57年となります。しかし働き始める18歳になるまでの8年間は労働しないと想定されるため、57年分のライプニッツ係数から8年分のライプニッツ係数を差し引くことで、10歳の49年分のライプニッツ係数を算出することができます。
18.761-6.463=12.298となり、表とほぼ同じ数値を算出することができます。

逸失利益の計算例

逸失利益は、被害者に後遺症が残った場合と死亡した場合とでその算出方法が異なります。算出式は下記となります。

後遺障害逸失利益:
年間の基礎収入×労働能力喪失率 ×労働能力喪失期間の中間利息控除係数
死亡逸失利益:
年間の基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間の中間利息控除係数

後遺障害が残った場合の逸失利益を計算してみましょう。基礎収入500万円で、後遺障害11級(労働能力喪失率20%)と判定された30歳の人の逸失利益は、
500万円×0.2×16.711=1,671万1,000円と算出することができます。

法定利率120年ぶりに改正

逸失利益は労働能力喪失期間が長いほど高額になりますが、期間が長いほど中間利息控除額も大きくなるため、年数ごとの増額は徐々に緩やかになります。ライプニッツ係数は労働能力喪失期間∞で20となるため、20を超える数値を乗じることはありません。
ライプニッツ係数は年5%の複利式というかなり高い利率で計算されており、この5%という法定利率は、120年以上変わっていません。近年の経済情勢からすると5%という利息は高すぎるために、これを低い利率にすべきとの主張が何年も前からありました。
そしてついに2017年4月に債権法改正案が可決され、法定利率3%への引き下げ、そして経済情勢によって3年ごとに見直す変動型になることが決まりました。実際の施行日は2019~2020年頃になると予想されています。
この改正により逸失利益の増額が見込まれるため、被害者の利益が増す一方で自動車保険料の値上げも懸念されています。今後の動きに注目が必要です。