日照権侵害で損害賠償請求できる条件とは? | 弁護士の選び方 | 弁護士がおすすめする東京・千葉・埼玉・神奈川の法律事務所
2017年4月19日

わたしたちには、良好な環境の中で生活を営む権利があります。建物の日当たりを享受する権利、いわゆる日照権も保護されるべき権利であると考えられています。
日照権に関するご近所トラブルは、土地の狭い日本においては避けて通れない問題です。少しでも影ができたら日照権侵害、というわけにはいきません。
どのような場合に日照権の侵害が認められるのでしょうか?

日照権

日照権とは

日照権は、憲法上に明記されている権利ではありませんが、判例や学説によりその存在を認められています。日照権を侵害していると判断された場合には、建物建築禁止の仮処分や損害賠償請求が認められる場合があります。 日照権の侵害が認められるかどうかは、その建物が建築基準法に違反して建てられているなど違法性の有無で判断されます。仮に基準を満たしていたとしても、周囲の環境や個々の状況を考慮した上で受忍限度を超えるようであれば違法とされ損害賠償が認められる場合もあります。

日照権侵害の法的基準

加害建築物の違法性は次のような基準で判断することができます。違法性が認められることで、慰謝料としての損害賠償請求が可能となります。建築の差止請求が認められるケースはまれです。建築差止や撤去による経済的な影響は大きいと考えられているため、悪質性や明らかな違法性があると判断されたような場合でしか認められません

用途地域が住宅系かどうか

各市町村の地域は、土地の使用用途によって大きく住宅系、商業系、工業系の3つに分けられています。さらに細分化させると12の用途地域に分けられており、それぞれの地域ごとに、建てられる建築物の種類、広さ、高さについての制限が設けられています。
住宅系の地域については、日照権に関する規制が多く、侵害が認められやすくなっています。逆に商業系や工業系の地域については利便性が重視されるため、高さなどの規制がなく日照権を主張しにくい地域であるといえます。どの地域に指定されているかは、都道府県や市町村のホームページなどで確認することができます。

日影規制

日影の状態が一定時間以上続かないように、建築物の高さを制限する規制です。建築基準法と各自治体の条例によって定められています。例えばある地域では、敷地境界線から5~10メートル離れた場所に立った時に、建築予定物による日影時間が3時間以内となるように建設計画を立てなければなりません。
日影規制が適用されるのは、住宅系地域を中心とした地域に限られます。

斜線制限

採光などを考慮した高さ制限です。道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限があり、用途地域によって定められています。特に近隣住宅の日照権に大きく関わるのが北側斜線制限です。建築物の北側にある家の日照(つまり南面採光)の確保は特に慎重に考慮されます。北側斜線制限は、住宅系の用途地域のみ適用されます。

その他基準

法規制による基準の他にも、受忍限度に関わる基準が判例などから判断することができます。

建築物の公共性

加害建築物が、学校、病院、養護施設など地域住民にとって必要性が高い建築物の場合、日照権の主張が難しくなります。逆に被害建築物が必要性の高い建築物の場合は、日照権の確保が重要視されます。

住み始めた時期

長く住んでいれば住んでいるほど、日照権の主張が認められやすくなります。逆に日照権が侵害されることを知りうるような状況で住み始めた場合は、日照権は認められません。

被害回避・縮小の可能性

被害を抑えるための計画変更が、どの程度リスクを発生させるかで判断されます。例えば建築差止めはリスクが大きいため、規模縮小などより現実的な手段での解決が求められます。

交渉の妥当性

建築物建設にあたり、周辺住民に十分な説明がされていないような場合や、交渉内容を無視するような悪質な場合には、被害者側の主張が認められやすくなります。

個人での解決は難しい

日照権を侵害が認められる基準は、違法性の有無と受忍限度の範囲ですが、法的規制を無視して建設をしているケースはほとんどありませんので、実際は受忍限度の範囲についての争いが中心になると考えられます。
受忍限度について考慮されやすいのは、加害建築物が中高層以上の建物であり被害者が多数いるような場合です。加害建築物が個人住宅(特に2階建て程度)の場合は、法規定内での建築であれば日照権の侵害を認められることはほとんどありません。
日照権についての争いは、建築に関わる法的知識や交渉手腕が必要となってきますので、まずは弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。